2009年09月16日

新ブランドの「アリタミュゼ」?

(前回の話しは、こちらから)
有田焼の補助事業として電通が企画して始まった「有田ルネッサンス」は
関係者の間では話題にもなった。しかし、入選作品の新ブランド(?)
「アリタミュゼ」は一時的に話題になっても、作品への関心が継続することは
どうもなかったようです。

有田ルネッサンス事業の入選作品をまとめたパンフレットには
=2007年、新ブランドスタート!「ARITAMUSE・アリタミュゼ」
と、書いてあります。
今までにない有田焼のデザインを発掘しようと、有田ルネッサンス事業で
入賞や入選した作品を、一枚のパンフレットにまとめ、これらのグループの
名称案が、企画提案をした電通から提出された。

新ブランドの「アリタミュゼ」?

それが、「アリタミュゼ」と名づけられ、アリタミュゼの名称の由来が
パンフレットには、以下のように紹介されています。
=「アリタと、MUSE(仏語でギリシャ神話の芸術の女神を意味する)の
合成語で、AMUSEはまた楽しさを意味しており、若い息吹が全国から
有田に吹き込まれ、若い有田焼となって世界へ楽しいテーブルシーンを
広げていくことでしょう。」と書いてある。

有田らしさがない作品なのに、若い有田という事で「アリタミュゼ」とは?
あれから3年近いけど、アリタミュゼは世界のどこに広がっていったのか。

1枚735円のおにぎり皿や、10万以上のオブジェな食器など、それぞれ
全く価値が異なり、客層も異なり、売る場所も定まらない、有田らしさが
全く見えない作品を集めて、「アリタミュゼ」とは驚きです。
それっぽい名前をつけたら、「新ブランド」になり、世界へ広がっていくと
電通は企画をしたのだから、ずいぶんと粗っぽい企画の事業内容です。
ブランド作りは、広告業界の最大手・電通が得意とする分野ですから
有田焼関係者は期待をしたのでしょうが、残念ながら、この企画をした
電通の担当者は新しい有田のブランド作りは得意ではなかったようです。
英語の書体で描かれたロゴタイプは、どこか外国の企業か商品のような
印象を受け、英語表記にするだけで、何となく良く見えてしまうようで
有田焼関係者は電通のする仕事に期待をしたのでしょう。

ある商品やお店が「ブランド」になるには、そのお店や商品を大事に支持して
くれる多くのファンがいるからです。今までの、そして今の有田焼のファンで
ある多くのお客さま方が支持してくれてこそ、新商品が「新ブランド」に育って
いく可能性はあるが、有田ルネッサンス事業は今までの有田らしくない作品
ばかりですから、従来の有田焼ファンの支持が得られるはずもなく、むしろ
反対に有田焼ファンからはソッポをむかれるかも知れません。

こうして選定された「アリタミュゼ」の作品が、一般客に展示された場所は
展示予算が無いため、K社の東京ショールームに展示されたようで
これを聞いた時、この事業は遊びで終わってしまったと感じたのでした。

その理由は、K社のショールームに展示すること自体が、すでに「場違い」。
K社に見えるお客さまは当たり前ですが、K社のファンのお客さまで
優雅で落ち着きのある食器デザインが好きな方たちが見えます。
そういった食器が多く展示されているK社の展示空間に、これらを展示して
初めて見た人は、これはK社の新作だと思い込み、しかもK社らしさは
微塵もなく、むしろ今回の作品は、K社の食器シリーズとは正反対なので
「面白い食器作品が置いてある」としか写りません。
もしも、これらの作品を見て気に入って注文しようとしても、K社は作品の
一部だけを制作しただけで、まだ流通も決まっていませんから
注文を受けることさえもできません。
有田ルネッサンスが粗っぽい企画だと書いたのは、販売計画も無いままに
電通の企画した「遊びの要素」がある食器開発事業に手を出してしまった
ビジネスセンスの「甘さ」が、補助事業で露見したのです。
話の続きは18日(金)に、これからの有田焼をテーマに。


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Posted by デザイン散歩 at 12:41 | Comments(0)
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