2009年09月11日

有田ルネッサンスの入賞食器

(前回の続きはこちらから)
今回は、有田ルネッサンスの「入賞作品」を紹介します。
入賞作品ですから、どれも個性的なモノばかり。
パンフレットに、「遊び心がカタチになった」と、書いてあるように
どの入賞作品も、遊んでいるのは確かだと思う。
同じパンフレットの表紙には、「ベストセラーの予感がする」とあるが
残念ながら、そんな予感は全くどれを見ても感じられません。

これらの作品を作った商社や窯元は、大変なエネルギー(人、金、時間)を
使った事でしょうが、これからの有田焼としては成立しないでしょう。
まあ~、見てもらうのが早いので、入賞作品をじっくりとご覧ください。

有田ルネッサンスの入賞食器
①優秀賞ー楽・ease(イーズ)
 漆器のような味わいの磁器陶板です。しかも両面使えるように
 なっていますから、気分によって表裏を変えて楽しめる。
 この陶板セットのサイズは、幅20cm、長さが50cm。
 価格は¥26,250。
 
=塗りモノ(漆器)のアイデアを、ただ焼き物に転用しただけ。
 食卓で、食器をリバーシブルで使うような食事シーン自体が、
 これからの食卓を豊かにする遊び方でしょうか。

有田ルネッサンスの入賞食器
②銀賞ーTAMA(タマ)
 白い球体が、心をま~るくするオブジェ。斜めに切られた軌道に沿って
 いろんな表情になり、重箱として料理を入れれば、玉手箱のような
 楽しさがご馳走に、と紹介されている。
 サイズは24cmの球、価格は¥126,000。

=この中に料理を入れたら相当な「重量」になるから、運ぶのが大変だ。
 しかも上の半分を開ける時には、逆テーパーだから指先には力がいる。
 使う時や、洗う時、片付ける時と、何かと労力が要ります。

有田ルネッサンスの入賞食器
③審査員特別賞ーKAIMAMI(カイマミ)
 40数箇所の透かし彫りの蓋を通して、中の料理を垣間見る。
 野菜を挿したり、手巻き寿司もよし。あるいは花を挿して花器に。
 フローティングライトを浮べて照明器具にと、幾通りにも楽しめる。
 サイズ外形が45cmで、価格は¥99,750。
 
=箸を入れて中の料理を出す時には、落とさないように注意せんば。
 中に入っている料理をさがすのが、遊びなんでしょうか。
 食器にも、花器にも、ある時は照明器具にと、ほんとうに使う?

入賞作品としては、ただユニークで面白いだけの感想しかない。
電通は最大手の広告代理店ですから、広告が本業の仕事です。
「有田でデザインコンペをやりますよ~」と、多くの雑誌に広告宣伝した
広報費で予算の大半を使ったのです。
これらを作った窯元には、「大変だったね」とねぎらう言葉が出ても
有田焼の復活に有益な作品ができて、良かったねとはとても言えない。

なぜ、こんな事になってしまったのか?
その大きな原因は2点あり、そのひとつはデザインコンペの内容自体に
問題があり、コンペ企画そのものが最初から「的はずれ」だったのです。
なぜ、「はずれ」だと断言するかと云うと、まず、デザインコンペのテーマが
 「今までの有田にはない=新しい」などの企画ですから、肝心の有田焼の
良さや有田焼らしさをスポイルしたデザインコンペにしてしまったのが
失敗の大きな原因になります。
最初の入り口が間違っていると、当然、出口も変な所に出てしまうもの。
この企画が有田焼の再生に役立つと思って考えた、大企業・電通の企画が
「的はずれ」だったのです。ですから審査員の選定も的はずれな人選になり
遊びの要素に片寄った作品が入賞することになったのです。

もうひとつの大きな原因は、この企画を採用した有田側にあります。
なぜなら、電通から提案された企画内容を有田焼当事者として、しっかりと
意見を言えるだけの、「目利き」が、その場にいなかった事が問題です。
電通はあくまでも「提案者」にすぎないのですから、その内容については
当事者である有田焼サイドで吟味し、正すべきは正すという「目利き役」が
その時の有田焼メンバーの中にはいなかったことです。
なにせ、世界的大企業の電通が考えた企画ですから、ここは電通に
まかせると、「素晴らしい食器」に出会えると期待したのかも知れません。
電通が企画した内容と、採択した有田焼の双方に原因があったのです。

ここ15年近くも低迷が続く、有田焼(低迷は陶磁器業全体なのですが)を
良くなるにどうすべきかを考えるためには、今までの「取り組み方」について
きちんと総括をすることが、初めの一歩になる。
特に、4000万近い補助事業の「取り組み方」には、今の有田焼が抱える
課題がよく表れており、これを検証することが大事です。

話の続きは、来週の月曜日に。


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Posted by デザイン散歩 at 12:44 | Comments(2)
この記事へのコメント
すごく興味深く読んでます。

どこに問題があったのかを気づかないでは、
これからいくら補助金をもらっても活かせないでしょうね。
Posted by あっぷるみんと at 2009年09月11日 19:26
あっぷるみんとさん、コメントをありがとうです。
おっしゃる通り、。
補助金をどう有効に活かせていていくかであり
また、補助金に頼らずに、これからの陶磁器事業にどう取り組むかです。
Posted by Dボーイ at 2009年09月11日 22:35
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